ほとんど報じられない人工甘味料の発がん性

 執筆者:総合内科専門医 荒井 隆志

 令和5年7月にWHOは人工甘味料のアスパルテームに発がん性の可能性があるという見解を示しました。
 重大なニュースなのに、テレビなどではほとんど報じられていません。その理由を含めて解説したいと思います。

目次

  アスパルテームとは

 アスパルテームは1980年代から用いられている人工甘味料で、清涼飲料水や食品などに幅広く使用されています。
 アスパルテームが用いられている商品はここでは紹介しきれないほどたくさんあります。
 砂糖の約200倍の甘さがあり、少量を用いるだけで商品に甘みをつけることができます。  
 このアスパルテームには以前から発がん性の懸念があり、今回これまでの研究に基づいてWHOから声明が出されました。

  アスパルテームの発がん性

WHOは物質の発がん性を以下のように4つのグループに分類しています。

グループ1 ヒトに対して発がん性がある
グループ2A おそらく発がん性がある
グループ2B 発がん性の可能性がある
グループ3 発がん性が疑われない

 今回のアスパルテームは「発がん性の可能性」があるグループ2Bの分類で、過剰に心配する必要はありません。
 WHOも「一般的な使用量では安全性に大きな懸念はない」と指摘しています。
 ちなみにアルコールはグループ1で、飲酒量が増えると確実にがんのリスクが高まります。

  人工甘味料のその他のリスク

 人工甘味料の摂取は、心筋梗塞や脳梗塞も増やす可能性があることがフランスから報告されています。
 この研究では、アセスルファムカリウムは心筋梗塞を1.40倍、スクラロースは1.31倍増やすという結果でした。アスパルテームでは脳梗塞が1.17倍多くなっていました。
 がんだけでなく、心臓病や脳卒中のリスクになる可能性にも注意が必要です。

  人工甘味料との向き合い方

 摂取量が増加するとリスクが高まるというだけなので、過剰に心配する必要はありません。
 時折少量を口にするぐらいなら問題ないと思います。
 ただカロリーゼロだからといって人工甘味料の入った清涼飲料水を多量に飲むことは避けた方がよいです。
 またプロテインを飲む人が最近増えているようですが、プロテインにもアスパルテームを含んだ人工甘味料が使われていることが多く注意が必要です。
 市販されているキシリトールガムにもアスパルテームが使われており、少し高価ですがキシリトール100%のガムがいいと思います。

  テレビでほとんど報じられない理由

 WHOの声明は重大なニュースなのですが、テレビではほとんど報じられていません。
 その理由はアスパルテームを使った商品を扱っている企業がテレビ局のスポンサーになっているからです。
 スポンサーの不利益となるような報道は控えるという忖度(そんたく)が働いているわけです。
 ちなみにビール会社も重要なスポンサーのため、テレビで「アルコールはグループ1の発がん性物質」なんて話題はまったく扱われません。
 メディアの情報のかたよりには注意が必要だと感じます。

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