頻尿

 排尿に関する問題で悩まれている方は意外に多く、2015年に行われた調査では男女ともに約6割の人に頻尿や尿もれがみられるという結果でした。

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  頻尿の原因

 女性の頻尿の原因として多いのが、「膀胱炎」と「過活動膀胱」です。膀胱炎は急性の頻尿で、過活動膀胱は慢性の頻尿を起こします。
 出産や加齢の影響で骨盤底筋が弱くなって生じる「骨盤臓器脱(子宮脱や直腸脱、膀胱瘤)」も頻尿の原因となります。
 子宮や直腸などの骨盤内の手術によって神経がダメージを受け、膀胱の機能が低下して頻尿が起こることもあります。
 男性の頻尿の原因として多いのが「前立腺肥大」ですが、ときに「前立腺がん」や「前立腺炎」、「膀胱がん」も頻尿の原因となるため注意が必要です。
 夜間の頻尿は「水分摂取過剰」や「心不全」、「抗利尿ホルモン低下」が原因で起こる夜間多尿が背景にあることが多いです。
 ストレスや冷えでも膀胱が過敏となり頻尿を引き起こします。肥満もお腹の圧力が高くなって頻尿になりやすいです。糖尿病や慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群でも頻尿が生じることがあります。

  頻尿の検査

 急性の頻尿では「尿検査」を行って膀胱炎や前立腺炎の有無を調べます。
 がんのリスクが考えられる場合は「エコー検査」や「PSA検査」で膀胱がんや前立腺がんのチェックを行います。
 エコー検査では、排尿後に膀胱に残っている尿の量をチェックして膀胱の機能を評価することもできます。
 膀胱がんや間質性膀胱炎(原因不明の特殊な膀胱炎)の診断には「膀胱鏡(膀胱の内視鏡検査)」が有用です。
 「排尿日誌」に排尿の回数や量を記録することで、過活動膀胱や夜間頻尿の診断の参考になります。500mlの計量カップで尿の量を測定します。1回の排尿量は200~400mlが正常です。
 心不全や糖尿病、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群が頻尿の原因になることがあり、必要に応じて検査を行います。

  日常生活での対策

 夕方以降のカフェイン摂取や水分過剰は夜間頻尿の原因となるため控えます。
 骨盤底筋の筋力低下で尿もれや頻尿を起こしやすくなるので、「骨盤底筋トレーニング」も有効です。
 膀胱に尿をためる練習をする「膀胱訓練」も重要です。方法はシンプルで、尿意を感じても排尿をがまんして、ある程度尿がたまってからトイレに行くようにします。無理せず少しずつ排尿間隔を延ばしていくのがポイントです。
 ストレスも頻尿を悪化させるためストレス対策も重要です。ストレスは夜間の中途覚醒の原因にもなります。

  頻尿の治療

 頻尿の治療は原因となる病気によって異なります。
 細菌による膀胱炎に対しては抗生剤治療を行います。抗生剤を短期間で止めると再発しやすいので5日前後は内服が必要です。
 過活動膀胱に有効なのが、抗コリン薬やβ3作動薬です。β3作動薬は最近使えるようになった薬で、口渇や便秘の副作用が少なくなっています。
 漢方薬の「牛車腎気丸」や「八味地黄丸」も頻尿への効果が期待できます。 
 前立腺肥大ではα1遮断薬やPDE阻害薬が使われます。内服治療でも効果が得られない場合は前立腺を削る手術を検討します。
 過活動膀胱で難治性の場合には、ボツリヌス毒素注入療法や仙骨神経刺激療法という選択肢もあります。
 夜間多尿で困っている男性の場合は、尿を減らす抗利尿ホルモンを補う薬の効果が期待できます。

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