腎臓が悪くなると、最終的には週3回の人工透析もしくは腎移植が必要となります。生活が大きく制限されることになる人工透析の原因のほとんどが慢性腎臓病です。
慢性腎臓病とは
慢性的に腎臓の機能が落ちていく状態を慢性腎不全と呼んでいましたが、最近では「慢性腎臓病」という病名が使われています。
高齢化や生活習慣病の増加により慢性腎臓病の患者数は増加しており、日本の患者数は軽度を含めると約1500万人と推定されています。
日本人の8人に1人が慢性腎臓病という計算になります。
実際に日本の透析患者数は年々増加し、現在約35万人が透析を受けています。
慢性腎臓病の原因
慢性腎臓病の原因として多いのが、糖尿病や高血圧、脂質異常症、高尿酸血症といった生活習慣病です。
加齢に伴って腎機能は低下しやすくなり、肥満や喫煙も悪化する原因となります。
その他にもIgA腎症やネフローゼ症候群、膠原病が慢性腎臓病の原因として挙げられます。
最近では慢性腎炎による透析導入は減少し、糖尿病や高血圧が人工透析の原因として多くなっています。
慢性腎臓病の診断
「蛋白尿」もしくは「eGFR(推定糸球体ろ過量)が60ml/分/1.73m2未満」が3か月以上持続する場合に慢性腎臓病と診断されます。
eGFR(推定糸球体ろ過量)は血液検査のクレアチニンという数値から計算することができます。
慢性腎臓病が進行するとeGFRが低下し、15ml/分/1.73m2未満まで落ちると人工透析や腎移植が必要となってきます。
慢性腎臓病の症状
慢性腎臓病はかなり進行するまで症状が出ないので要注意です。
末期の腎不全になるとむくみや息切れが出やすくなり、体内に老廃物がたまって尿毒症という状態になります。
尿毒症では食欲が低下したり、倦怠感、頭痛、けいれん、意識障害などがみられ、悪化する前に透析を始める必要があります。
慢性腎臓病の予防と治療
食事療法
慢性腎臓病の予防や治療には、高血圧や糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、肥満といった生活習慣病の改善が重要です。
食事に注意して塩分制限や体重管理、禁煙に取り組みます。
慢性腎臓病が進むと食事のタンパク質やカリウムを制限する必要も出てきます。
最近では加工食品に含まれるリンが腎機能を悪化させることが懸念されており、リンが添加された加工食品を減らします。
運動療法
以前は腎不全の場合は安静にすることが常識でしたが、最近では適度な運動は腎機能の低下を緩やかにすることが分かっています。
病状にもよりますが、適度に身体を動かすことが推奨されます。どのくらいが適度なのかは個人差がありますので、お気軽にご相談ください。
薬物療法
最近では薬物療法により慢性腎臓病の進行をかなり抑えることが可能になっています。
糖尿病や高血圧の薬物療法をしっかりと行うことが重要で、特にSGLT2阻害薬やRA系阻害薬という薬が腎機能の悪化を抑制する効果が高いです。
腎機能の低下に伴って生じる貧血や高カリウム血症、むくみといった症状にも必要に応じて薬を用います。
透析、腎移植
慢性腎臓病が末期まで進行した場合は、透析もしくは腎移植しか方法はありません。
透析になると原則として週3回医療機関に通院し、毎回4~5時間ベッドで透析を受ける生活となります。
腎移植を受ければ透析は必要なくなりますが、日本ではドナーが少なく希望してもなかなか受けることができません。
このような状況を避けるために慢性腎臓病の早期の段階から十分な治療を行うことが重要です。
慢性腎臓病は早期の段階から適切に対処することが大切です。健診でタンパク尿やクレアチニン値の異常を指摘されたら、早めにご相談ください。