認知症

 認知症は高齢化社会の最大の課題のひとつです。認知症の患者数は増加の一途をたどっており、2050年には一千万人を超えると推計されています。

目次

  認知症の原因

  • アルツハイマー型認知症
  • 血管性認知症
  • レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症
  • アルコール多飲、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏、水頭症、脳腫瘍

 認知症の原因で最も多いのが「アルツハイマー型認知症」です。脳にβアミロイドという蛋白質が蓄積することで起こるとされています。
 次に多いのが「血管性認知症」で、脳梗塞や脳出血が原因で起こる認知症です。高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙があるとリスクが高まります。
 幻視やパーキンソン症状を伴う「レビー小体型認知症」や人格の変化が目立つ「前頭側頭型認知症」というタイプもあります。
 アルコールの多飲が原因と考えられる認知症もみられます(1日に20g以上のアルコールで認知症のリスクが上がると報告されています)。
 甲状腺機能低下症やビタミンB12欠乏、水頭症、脳腫瘍も認知症の原因となることがあります。

  認知症の診断

 認知症の診断に明確な基準はなく、問診や認知機能テスト、血液検査、画像検査を組み合わせて総合的に判断します。
 特に家族からの日常生活の様子についての情報はとても重要です。
 認知機能テストは「長谷川式認知症スケール」が最も用いられています。30点満点で評価しますが、この点数だけで診断ができるわけではありません。
 頭部MRIやCTといった画像検査は水頭症や脳腫瘍、血管性認知症の評価に有用です。MRIで認知症の診断ができるわけではなく補助的な検査です。
 血液検査で甲状腺機能低下症やビタミンB12欠乏がみられないかどうかもチェックします。
 水頭症や脳腫瘍、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏は治療を行えばかなり良くなることが期待できるので、見逃さないように注意が必要です。

  認知症の治療

 水頭症や脳腫瘍、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏はそれぞれの治療を行うことで改善が見込めます。
 血管性認知症は高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満といったリスクファクターを治療することで進行を抑えることができます。
 アルツハイマー型認知症はコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬の効果が期待できます。進行を緩徐にする程度の効果が多いですが、かなり効くケースもあります。
 最近「レカネマブ」というβアミロイドを除去する注射薬の効果が注目されていますが、それでも認知機能低下を緩やかにするぐらいで劇的に改善するわけではありません。
 認知症は薬の投与だけでなく、周囲のかかわり方が重要です。必要に応じて介護保険を申請し、適切なサポートを行っていくようにします。

  認知症の予防

 今後認知症の治療薬の開発が期待されますが、やはり最も重要なのが予防です。
 注意すべきポイントとして以下の14つが挙げられます。

  • 身体活動(運動だけでなく家事や通勤などで日常的に身体を動かすことも大切です)
  • 健康的な食事(詳しく説明すると長くなりますが、基本的に身体によい食生活が認知症予防にもよいです)
  • 禁煙(吸っている人は早めに禁煙しましょう!電子タバコの影響についてはまだ分かっていません)
  • 過剰な飲酒を止める(1日20g以上のアルコールは認知症のリスクを高めます)
  • 適正体重(BMI25未満であっても体脂肪に注意です)
  • 高血圧(生活習慣に取り組んでも血圧が高い人は薬が必要です)
  • 糖尿病(血糖値が高いことも認知症のリスクを高めます)
  • 脂質異常症(高血圧や糖尿病ほど認知症への影響は強くありません)
  • うつ病対策(うつ病も認知症のリスクを高めることが明らかになっています)
  • 難聴(耳に負担となる騒音に注意し、聴力が落ちたら補聴器を使いましょう)
  • 認知トレーニング(いわゆる脳トレですが、仕事や趣味などで脳を使うことも含まれます)
  • 社会活動(社会的なつながりはとても重要です)
  • 適度な睡眠時間(1日6時間以下の睡眠は認知症のリスクを高めます)
  • ストレス対策(過剰なストレスも認知症の原因になります)

 こうしたポイントを押さえることで認知症のリスクを大幅に減らすことが期待できます。

認知症は人生百年時代の大きな課題ですが、生活習慣病への対策を行うことで、認知症を予防することも可能です。認知症が気になる方はぜひご相談ください。

目次