鉄欠乏性貧血

 貧血の原因で最も多いのが鉄欠乏性貧血で、爪の変形の原因にもなります。月経による鉄分の喪失が原因として多いですが、胃がんや大腸がんが原因となることもあります。

目次

  鉄欠乏性貧血とは

 鉄欠乏性貧血は、ヘモグロビンの合成に必要な鉄が不足することによって生じる貧血です。
 鉄欠乏性貧血は最も多い貧血で、貧血の約7割が鉄欠乏性貧血が原因です。
 月経のある若い女性に多くみられます。

  鉄欠乏性貧血の原因

 鉄欠乏の原因で最も多いのが月経です。子宮筋腫や子宮腺筋症があり過多月経になると貧血を起こしやすくなります。
 偏食やダイエットで鉄の摂取が少ないことも原因となります。激しい運動で赤血球が壊れることが原因の「スポーツ貧血」もあります。
 ピロリ菌による胃炎が原因で鉄の吸収が悪くなり貧血を起こすこともあります。
 注意が必要なのが消化管からの出血です。胃がんや大腸がん、胃十二指腸潰瘍からの出血で鉄欠乏性貧血を起こすことがあり、内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)を検討する必要があります。

  鉄欠乏性貧血の症状

  • 疲労感、息切れ、浮腫
  • 爪の変形、舌炎、口角炎、氷食症
  • 集中力の低下、うつ
  • むずむず脚症候群

 鉄欠乏性貧血の症状は多彩で、貧血による症状と鉄不足による症状の2つに分けられます。
 貧血の症状としては、疲労感、息切れ、浮腫といった症状がみられます。悪化すると心不全を起こす危険性もあります。
 鉄不足の症状として、爪の変形、舌炎、口角炎が起こります。氷が無性に食べたくなる氷食症もよくみられます。
 気づかないうちに集中力の低下やうつを起こしていることもあり、要注意です。
 夜間に脚の不快感が出る「むずむず脚症候群」を引き起こして不眠の原因になることもあります。

  鉄欠乏性貧血の治療

 消化管からの出血や過多月経がある場合は、それに対する治療を行います。
 軽度の貧血であれば、まずは食生活に留意します。赤身の肉や魚、大豆製品、緑黄色野菜、海藻などに鉄が含まれます。特にヘム鉄の多い肉類や魚類は有効です。
 ある程度の貧血では鉄剤の内服が望ましいです。
 鉄剤の内服は吐き気が出ることが多かったのですが、最近は吐き気の少ない薬剤が開発されています。
 どうしても吐き気で困る場合は、小児用のシロップを内服する方法もあります。
 また最近では週1回の注射の鉄剤も使えるようになっています(薬剤を取り寄せる必要があります)。

鉄欠乏は集中力の低下やうつの原因となることもあり要注意です。鉄剤は最近吐き気が少ない製剤が開発されています。貧血が気になる方はお気軽にご相談ください。

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