下痢はよくある症状ですが、急性と慢性で考えられる病気が大きく異なります。大腸がんや炎症性腸疾患が下痢の原因になっていることもあり要注意です。
急性の下痢
感染性腸炎
急性の下痢で最も多いのが、ウイルスや細菌による感染性腸炎です。ウイルスによる腸炎は冬に多いですが、細菌による腸炎は夏に増加します。ウイルス性は吐き気を伴う胃腸炎を呈することが多いです。基本的には数日から1週間の経過で治りますが、過敏性腸症候群に移行して症状が続く方もおられます。
薬剤性
薬剤で多いのが抗生物質による下痢です。抗生物質により腸内の細菌のバランスが崩れることによって下痢が生じます。必要のない時には抗生剤を使わないことが重要です。下剤が効きすぎて下痢することもあります。適度な量に調節する必要があります。まれに胃酸を抑える薬が下痢の原因になることもあります。
慢性の下痢
過敏性腸症候群
慢性の下痢で最も多いのが過敏性腸症候群です。体質やストレス、食生活の影響で腹痛や下痢、便秘が生じます。内視鏡や血液検査では特に異常はみられません。感染性胃腸炎の後で過敏性腸症候群をきたすこともあります。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
食生活の変化とともに増加しているのが炎症性腸疾患です。数年前の推計では潰瘍性大腸炎は22万人、クローン病は7万人と考えられています。潰瘍性大腸炎は難病で最も多い疾患です。内視鏡を行うことで診断につなげることができます。
大腸がん
大腸がんは便秘の原因になるだけでなく、下痢を起こすこともあります。大腸がんで腸が狭くなると緩い便しか通らなくなり下痢になります。放っておくと腸閉塞になってしまうため、早めに内視鏡検査(大腸カメラ)を行うことが重要です。
甲状腺機能亢進症
バセドウ病による甲状腺機能亢進症でも下痢がよくみられます。動悸やふるえ、発汗などの症状がみられる場合は血液検査で甲状腺ホルモンを検査します。
糖尿病
糖尿病による自律神経障害で下痢や便秘を起こしやすくなります。神経障害を起こさないように糖尿病の初期の段階からしっかりと治療することが重要です。