高齢化とともに増えている心不全は高齢化社会の重要な課題のひとつです。今後さらに増加して、感染症が広がるように「心不全パンデミック」となることが懸念されています。
心不全とは
心不全は心臓のポンプ機能が低下し、十分な血液を送り出せなくなった状態です。
高齢化とともに増加しており、現在日本では約120万人が心不全と推定されています。
心不全の生存率は低く、5年後の生存率は約5割と報告されています。
現在がんの5年生存率は68%と改善しており、心不全の方が生存率が低いのが実情です。
心不全の原因
心不全の原因として最も多いのが高血圧です。高血圧が続くと心臓に負担がたまり機能が低下しやすくなります。
また糖尿病や肥満でも心不全を起こしやすくなります。心不全になるとやせていきますが、もともとは太っていた方が多いです。
高血圧や糖尿病、喫煙によって起こりやすくなる虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)も心不全の原因となります。
その他、不整脈や心筋症、弁膜症といった心臓の病気で心不全がみられることがあります。
心不全の症状
心不全の症状で代表的なのが、浮腫と息切れです。
浮腫は重力の関係で下肢に起こりやすく、夕方にかけて悪化します。
息切れは最初は運動時にみられますが、悪化すると安静時にも呼吸困難を起こすようになります。
夜に寝ているときに呼吸困難が生じ、座ると改善するのも心不全に特徴的です。
倦怠感や手足の冷え、咳、夜間頻尿も心不全によってみられやすい症状です。
心不全の診断と検査
心不全の診断の基本は問診と診察、そして胸部レントゲン、心電図です。
血液検査のBNPやNTproBNPも診断の参考となります。
心臓の状態をより詳細に評価するためには心臓超音波検査(心エコー)を行います。
あらい内科クリニックでは、胸部レントゲンや心電図、血液検査で心不全の評価を行い、必要に応じて超音波検査が可能な医療機関に紹介させていただきます。
心不全の治療
浮腫や息切れを起こしている場合は、尿を増やす利尿剤や酸素吸入を行います。
虚血性心疾患や不整脈、弁膜症といった心臓の病気がある場合はそれに対する治療が必要です。
心臓の収縮力が低下しているかどうかによって使う薬剤は異なってきます。
最近心不全には新たな薬が登場しており、今後治療成績が向上することが期待されています。
心不全の予防
心不全の治療は進歩していますが、それでも心不全になると生存率は低く生活の質も下がってしまいます。
心不全にならないように、若いときから予防に取り組むことが重要です。
塩分やカロリーの過剰摂取に注意し、肥満にならないようにします。運動習慣や禁煙も大切です。
高血圧や糖尿病、脂質異常症を定期健診でチェックして、必要に応じて治療を行います(高血圧や糖尿病を放置するのが最もよくありません)。
最近高血圧の管理目標は厳しくなっており、自宅での血圧は125/75mmHg未満が目標になります。