意外に多い大人の食物アレルギー

 食物アレルギーといえば小児のイメージですが、実は成人の食物アレルギーも多くみられます。
 今回大人の食物アレルギーについて解説します。

目次

成人の食物アレルギーの原因

まずは原因となる食品ですが、下の表のように小児とはだいぶ異なります。

0歳1~2歳3~6歳7~17歳18歳以上
1位鶏卵鶏卵木の実果物甲殻類
2位牛乳魚卵魚卵甲殻類小麦
3位小麦木の実落花生木の実
4位牛乳果物小麦果物
5位果物鶏卵鶏卵大豆

甲殻類(エビ、カニ)

 成人では、小児でよくみられる鶏卵や牛乳のアレルギーはほとんどなく、エビやカニといった甲殻類のアレルギーが多くみられます。エビにアレルギーがある人の3分の2はカニにもアレルギーがあるとされています。

小麦

 小麦のアレルギーは運動後に起こる運動誘発性のアレルギーが多いです。小麦を食べるだけは症状は出なくて、小麦製品を食べた後に運動することでアレルギー症状が発症します。

 魚のアレルギーは魚そのものだけでなく、魚に寄生するアニサキスに対するアレルギーも多いと考えられています。アニサキスに対するアレルギーの場合、食べてからかなり時間がたって症状が出ることもあります。魚を加熱や冷凍するとアニサキスは死にますが、アレルギーは回避できないと考えられています。

果物

 果物はキウイが最も多く、次いでリンゴやモモ、メロン、バナナが知られています。シラカバやブタクサの花粉との交差反応(同時にアレルギーを起こすこと)もみられます。

大豆

 大豆アレルギーは、最近の健康志向を背景に豆乳でアレルギーを起こす人が増えているようです。加工すればアレルギーは起こしにくくなり、豆腐や味噌は問題ないことも多いです。
 納豆アレルギーも存在することが知られています。これは大豆アレルギーとは関係なく、クラゲに刺されることで納豆特有の成分にアレルギーが引き起こされることが分かっています。


 最近の健康志向で増えているとされるのがクルミのアレルギーです。ピーナッツアレルギーが有名ですが、クルミの他にもカシューナッツやアーモンド、ヘーゼルナッツ、ピスタチオなどのアレルギーがあります。

食物アレルギーの症状

 食物アレルギーの症状の出方は、①即時型反応、②食物依存性運動誘発アナフィラキシー、③口腔アレルギー症候群の3つがあります。

即時型反応

 食物アレルギーで最も多いのが即時型反応で、原因となる食品を食べてから2時間以内(多くは30分以内)に症状が現れます。
 皮膚症状が最も多く、じんましんやかゆみ、紅潮などがみられます。のどの違和感や咳、喘息、腹痛や嘔吐がみられることもあります。
 重症になるとアナフィラキシーショックを起こし緊急の対応が必要です。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

 小麦や甲殻類を食べてから2時間以内に運動をすることで症状が現れます。運動以外にも入浴やストレスなどで症状が誘発されることもあります。
 全身のじんましんや咳、喘息などが出て、悪化すると血圧が下がってショックを起こすこともあります。

口腔アレルギー症候群

 りんごやもも、洋梨など生の果物や野菜を食べたときに、口の中やのどにかゆみや腫れが生じるアレルギーです。

食物アレルギーの診断

 診断には丁寧な問診を行って、食事内容や経過の詳細を確認することがまず大切です。診断に役立つ検査には以下の3つがあります。

特異的IgE検査

 手軽に行える検査として、血液検査でIgEというタイプの抗体を調べる方法があります。 
 採血をして検査会社に提出するだけで結果が出るため、アレルギーに詳しくないクリニックでも検査することができます。
 ただし注意が必要なのが、検査が陽性でも症状の原因となってるとは限らないことや陰性でも可能性は否定できないことです。
 また同じ小麦や大豆のアレルギーでも検査の項目が複数あるため、検査の特性を理解しておくことが必要です。

プリックテスト

 プリックテストはアレルギーの原因として疑われる物質を溶かした液を皮膚に注入する検査です。
 15分後の皮膚のアレルギー反応を判定します(陽性の場合は赤く腫れます)。
 溶液の試薬が必要で、行っている医療機関は限られます。

経口負荷試験

 負荷試験はアレルギーの原因として疑わしい食品を医療機関で食べてもらって症状が出るかどうかを確認する検査です。
 ときに重症のアナフィラキシーを起こすこともあるため、慎重に行う必要があります。
 最も確定診断につながる検査ですが、リスクや煩雑さのため行っている医療機関はほとんどありません。

  食物アレルギーの対策と治療

 アレルギーの原因となる食品を避けることが基本になりますが、神経質になりすぎるのもよくありません。
 大豆アレルギーがあっても豆腐や味噌に加工してあれば問題ないことも多いです。
 ひとつのナッツにアレルギーがあってもすべてのナッツを避ける必要はなく、交差反応があるものに注意することが大切です。
 あまり制限しすぎずに食べられる範囲を模索していく必要があります。
 一方で食物アレルギーは重症になるとアナフィラキシーを起こすため、命にかかわるケースもあります。
 そのためアレルギーの程度が強い人は、エピペンを持っておくことが勧められます(強いアレルギーが出たときに、太ももの筋肉に注射します)。

 大人の食物アレルギーについて紹介しました。
 食物アレルギーは小児だけの病気ではなく、大人になってから発症することもよくあります。
 原因がよく分からないじんましんの原因になっている可能性もあります。
 食物アレルギーが気になる方はお気軽にご相談ください。

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