便秘症は高齢化とともに激増している病気です。便秘といえば若い女性のイメージがありますが、加齢に伴って男性も増加し、高齢者の便秘はかなり多くみられます。
便秘がもたらす問題
便秘症は実は要注意の病気で、腹部の張りや腹痛の原因になるだけではありません。
排便時のいきみが原因で心臓病や脳卒中のリスクが高くなり、便秘があると死亡率が上昇するという報告があります。
まれに高度な便秘が原因で大腸が破れて致命的になることもあります(宿便性大腸穿孔と呼ばれています)。
便秘があると仕事のパフォーマンスが低下することも報告されています。
便秘の原因
加齢や生活習慣の乱れが原因になることが多いですが、重大な病気が原因となっていることもあります。
まず要注意なのが「大腸がん」で、進行すると便秘を起こして、便が通らなくなる「腸閉塞」を来すこともあります。
「糖尿病」や「パーキンソン病」も便秘を起こすことが多い病気です。
その他にも「甲状腺機能低下症」や「高カルシウム血症」が便秘の原因となることがあります。
便秘と下痢を繰り返したり腹痛が目立つ場合は「過敏性腸症候群」という病気も考えられます。
一部の薬剤が便秘の原因になることもあります(薬剤性便秘と呼ばれています)。
便秘の検査
大腸がんの可能性も考えられる場合は便潜血検査や内視鏡検査(大腸カメラ)を行います。急に生じた便秘や血便がみられる場合は必ず検査をしておいたほうがよいです。
腸閉塞が懸念される場合はレントゲンやCT検査を行います。腸閉塞を起こしかけている場合は内視鏡検査の下剤は避ける必要があります。
血液検査で甲状腺ホルモンやカルシウムの値を確認することもあります。
便秘の治療
日常生活
便秘対策でまず重要なのが生活習慣の見直しです。
適度な運動や食物繊維の摂取は有用です。運動は腸の動きを促す効果があります。食物繊維の過剰摂取は腹部膨満感やガスの増加をもたらすこともあり注意が必要です。
十分な睡眠時間や規則正しい生活も重要です。直腸に便がたまり便意を感じたら我慢せず排便することを習慣にします。
水分摂取が少ないと便が硬くなり便秘になりやすいため、適度な水分摂取も推奨されます。
排便時に「足台」を利用すると、直腸の角度がつき排便しやすくなります。
薬物治療
これまで便秘の治療薬には大腸を刺激する薬(刺激性下剤)が使われてきましたが、長期間使用すると大腸の色素沈着を起こしたり腸の動きが悪くなる弊害があることが分かってきています。
コーラックなどの市販薬にも刺激性下剤が使われていることが多いため、漫然と使い続けないように注意が必要です。
刺激性下剤ではない薬剤で、安価で医療機関でもよく使われているのは酸化マグネシウムで、市販薬として購入することもできます。
酸化マグネシウムは基本的に安全な薬ですが、高齢者や腎臓が悪い人は高マグネシウム血症を起こすことがあり注意が必要です。
最近、刺激性下剤ではない新しいタイプの下剤が次々と開発されています(現在のところ医療機関で処方を受ける必要があります)。
市販の刺激性下剤を長期間使用している方は、医療機関を受診して相談することが望ましいです。
便秘症は軽視できない病気です。刺激性下剤を長期に使うことはよくないので、気になる方はお気軽にご相談ください。