糖尿病とは
糖尿病は血液中のブドウ糖が多くなる高血糖が続く病気で、インスリンの不足や働きが十分でないことによって起こります
高齢化やライフスタイルの変化とともに増加しており、現在日本では予備群を含めると約2千万人いると推定されています。
以下の表のように糖尿病には4種類ありますが、ほとんどが2型糖尿病です。
2型糖尿病 | 1型糖尿病 | 妊娠糖尿病 | その他の糖尿病 |
インスリン作用の不足 | インスリンの欠乏 | 妊娠 | 膵がん、ステロイドなど |
糖尿病増加の原因
日本の糖尿病患者数は増加しており、予備群を含めると約2千万人いると推定されています(糖尿病が疑われる人は約1千万人)。
患者数が増えている理由として考えられるのが、「運動不足や肥満の増加」と「高齢者の増加」の2つが挙げられます。
若い時の運動不足や肥満が原因で膵臓の負担が蓄積し、加齢に伴ってインスリンの分泌が低下して糖尿病にかかりやすくなるのです。
これからさらに高齢化社会が進むと、糖尿病患者数はさらに増加することが懸念されています。
糖尿病が引き起こす合併症
糖尿病が引き起こす病気(合併症)は多岐にわたります。よく知られている網膜症や腎症、神経障害といった三大合併症だけでなく、動脈硬化や認知症、がん、感染症などのリスクも増加します。
三大合併症(網膜症、腎症、神経障害)
まず有名なのが三大合併症(網膜症、腎症、神経障害)で、網膜症は失明原因の第3位で、腎症は人工透析の原因の第1位となっています。
神経障害はしびれや痛み、立ちくらみ、便通異常、ED(勃起不全)を起こし、ひどいしびれや痛みに悩まされる方もいます。
また感覚が鈍くなると足が腐る壊疽(えそ)を起こしやすくなり、下肢切断の原因となります。
動脈硬化
糖尿病は全身の血管を老化させ、動脈硬化を引き起こします。
心臓の血管(冠動脈)に動脈硬化を起こすと狭心症、心筋梗塞の原因となります。糖尿病があると心筋梗塞のリスクが2~3倍に増加します。
脳の血管に動脈硬化が進むと脳卒中(主に脳梗塞)を起こしやすくなります。脳卒中は後遺症として麻痺や認知症、失語症を起こし要介護の原因の第1位です。
足の血管に動脈硬化を起こすと歩行時に足が痛くなったり、壊疽(えそ)を起こしやすくなります。
認知症
糖尿病では認知症のリスクが約2倍に増加します。
脳梗塞による脳血管性認知症だけでなく、アルツハイマー型認知症も増加することが知られています。
がん
糖尿病では一部のがんにかかるリスクが高まります。
特にかかりやすくなるのが大腸がん、肝臓がん、すい臓がんです。
大腸がんは女性のがん死亡の第1位で、すい臓がんは第3位であり要注意です。
糖尿病の方は大腸がんやすい臓がんの検査をすることが望ましいです。
感染症
糖尿病があるとコロナの死亡率が高いことが一時話題となりましたが、コロナ以外の感染症も重症化しやすいです。
血糖値が高いと免疫が低下し、ウイルスだけでなく細菌や真菌といったさまざまな感染症のリスクが増大します。
糖尿病の症状
- 口渇(のどが渇く)
- 多飲(水分をたくさん飲む)
- 多尿(尿がたくさん出る)
- 体重減少、倦怠感
糖尿病はかなり悪化しないと症状は出ません。これが糖尿病の怖さでもあります。症状がない間に早めに受診して治療に取り組むことが重要です。
血糖値が300mg/dl以上になると、のどが渇いて水をたくさん飲むようになり、トイレが頻繁になります。
さらに血糖が上昇すると、栄養を細胞に取り込めなくなり体重が減ってきます。
悪化すると糖尿病性ケトアシドーシスや昏睡を起こして危険な状態に陥ることがあります。
また糖尿病の合併症を起こすと、その合併症の症状がみられるようになります。
糖尿病の検査
糖尿病の診断基準
以下の2つを満たす場合に糖尿病の診断となります。
- 空腹時血糖値が126mg/dl以上もしくは随時(空腹でない)血糖が200mg/dl以上
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が6.5%以上
空腹時血糖が110~125mg/dlや随時血糖が140~199mg/dl、HbA1c6.2~6.4%は糖尿病予備群に該当します。予備群でも心臓病のリスクは上昇するため、糖尿病の発症に注意しながら食事や運動に取り組む必要があります。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)とは
糖尿病の検査で最も重要なのがHbA1cです。血糖値はその時々で変動しますが、HbA1cは1~2か月の血糖値の平均を反映します。HbA1cが6.5%以上が糖尿病の診断の目安となります。またHbA1cの数値が血糖のコントロールの指標となります。
糖尿病の治療
糖尿病の治療は、「食事療法」、「運動療法」、「薬物療法」の3つが重要です。
食事療法
糖尿病の治療において食事療法はとても重要です。しかしさまざまな考え方があり、意見の分かれる分野でもあります。
従来は食品交換表というものを用いてカロリーを管理するのが教科書的なやり方でした。しかし難易度が高く、ほとんどの方には実践が難しい方法です。
糖質制限は比較的取り組みやすく、効果も出やすい方法です。しかしやり方を間違えると、健康を害するリスクもあります。
あらい内科クリニックでは特定の方法にこだわらず、ライフスタイルに合わせた食事療法を一緒に探っていきたいと思います。
糖尿病の改善だけでなく、健康全般を維持して向上することを目的とした食事療法を提案させていただきます。
運動療法
運動は糖尿病の改善だけでなく、心身の健康を保つうえで重要な取り組みです。
ただ運動の好き嫌いには個人差があり、なかなか運動に取り組めない方がおられるのは当然のことだと思います。
あらい内科クリニックではそうした方も身体を動かしていけるような工夫を一緒に考えていきたいと思います。
またご高齢の方や基礎疾患がある方には、リスクを考慮しながら適度な運動を提案させていただきます。
薬物療法
糖尿病の薬は自分が医師になった2002年と比べて格段に進歩しています。
メトホルミンは心筋梗塞や脳卒中、網膜症といった合併症を大きく減らす効果が確認されています。
DPP4阻害薬という薬は、副作用が少なく高齢者でも使いやすい薬剤です。
SGLT2阻害薬は余分な糖を尿に出すことで血糖を下げます。この薬は血糖を下げるだけでなく、心不全や腎不全の進行を抑える効果が明らとなっています。
GLP1作動薬は主に注射薬ですが、体重を減らす効果が高く、心筋梗塞や腎症といった合併症を減らすことも期待できます。
低血糖を避けつつ血糖を下げ、合併症を予防することを目標に治療に取り組みます。
糖尿病になっても適切な治療を受ければ、糖尿病がない人と同様の健康寿命をまっとうすることが可能です。あらい内科クリニックでは血糖を下げるだけでなく、健康の維持向上を目指して総合的な視点でサポートさせていただきます。