過敏性腸症候群はとても多い病気で、日本人の7人に1人が過敏性腸症候群という推計もあります。症状が悪化すると社会生活に支障をきたすことも多い病気です。
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群は腸にがんや炎症などの異常がないにもかかわらず、慢性の腹痛や下痢、便秘、ガス貯留を起こす病気です。
患者数はとても多く、軽症を含めると日本人の14%に過敏性腸症候群がみられると推計されています。
男女比は1:2で女性に多く、高学歴やうつの患者で罹患率が高いことが知られています。
20~30代の若い人に頻度が高く、加齢とともに減っていきます。
過敏性腸症候群の症状
慢性の腹痛や腹部不快感と下痢や便秘が過敏性腸症候群でみられる症状です。
排便後に腹痛が改善しやすいことも特徴のひとつです。
主にみられる症状によって以下の3つに分類されます。
① 下痢型
② 便秘型
③ 混合型(下痢と便秘の両方を繰り返す)
血便や発熱、体重減少がみられる場合は他の病気の可能性も考慮する必要があります。
過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群の主な原因はストレスです。脳と腸は密接な関係にあり「脳腸相関」と呼ばれています。
食生活の乱れや運動不足も過敏性腸症候群の悪化を引き起こします。
感染性腸炎をきっかけに過敏性腸症候群を発症することも知られています。
最近では腸内細菌のバランスも過敏性腸症候群と関連があることが分かっています。
過敏性腸症候群の検査
過敏性腸症候群では検査の異常はみられませんが、他の病気が隠れている可能性に注意が必要です。
血液検査や腹部エコー、内視鏡検査を必要に応じて行います。
特に血便や発熱、体重減少がみられる場合は内視鏡検査(大腸カメラ)で大腸がんや炎症性腸疾患がないかどうかを検査する必要があります。
過敏性腸症候群の治療
生活習慣の改善
ストレスや生活習慣の乱れがある場合は、対処することによって症状の改善が期待できます。
適度な運動によって過敏性腸症候群が改善することも報告されています。
脂っこい食べものやカフェイン、香辛料は控えるようにします。
最近以下の表で示すようなFODMAP食が過敏性腸症候群の症状と関連することが分かっています。
オリゴ糖 | 小麦、タマネギ、ネギ、ニンニク、豆類 |
二糖類 | 牛乳、アイスクリーム、ヨーグルト |
単糖類 | リンゴ、ナシ、スイカ、はちみつ |
糖アルコール | モモ、ガム、菓子類 |
ヨーグルトや豆類、りんごといった一般的には健康によい食品も原因になることがあるため注意が必要です。
どの食品が原因になるかは個人差があるため、症状が出ないようなら避ける必要はありません。
薬物療法
症状で困る場合は、生活習慣の改善に取り組みながら薬による治療を行います。
効果のある薬剤は複数あり、主にみられる症状に合わせて薬を調整します。
症状が落ち着いたら薬の減量や中止を検討します。
完璧を目標にするとしんどくなるので、日常生活に支障にならない程度の症状を目標にしてこだわりすぎないことも大切です。