脂肪肝

 健診で肝臓の数値の異常(肝機能障害)を指摘されて受診する方は多いですが、最近ではそのほとんどが脂肪肝が原因です。最近増えている脂肪肝ですが、けっして侮れない病気です。放置していると肝硬変や肝臓がんといった怖い病気を引き起こすことがあります。

目次

  脂肪肝の原因

  • 肥満
  • アルコール

 脂肪肝の原因の第一は肥満です。カロリーが過剰になると肝臓に脂肪が蓄積されるようになります。脂肪の摂取だけでなく、炭水化物も過剰になると脂肪に変換されてたまっていくことに注意が必要です。
 必ずしも体重の大きさに相関するわけでなく、もともとやせ型だった人が中年になって体重が増えたりすると、体重がそれほど重くなくても脂肪肝になりやすいです。
 アルコールも脂肪肝の原因になりますが、アルコールがメインの原因の場合はアルコール性肝障害という病名になります。

  脂肪肝の診断

 脂肪肝の診断はシンプルで、腹部超音波検査(エコー検査)で肝臓の見え方を確認することで診断できます(超音波で肝臓が白くうつります)。
 さらにB型肝炎やC型肝炎のウイルスがいないかどうかや、薬やアルコールが影響している可能性も考慮しながら診断します。
 また肝臓の腫瘍も要注意で、脂肪肝と思いきや肝腫瘍が肝機能異常の原因ということもあります(肝腫瘍の有無は超音波検査で確認できます)。
 安易に脂肪肝と判断せず、他の原因がないかどうかを検査して確認することが重要です。
 あらい内科クリニックでは腹部超音波検査で肝臓の状態を詳しく調べることが可能です。

  脂肪肝が引き起こす問題

  • 脂肪肝炎
  • 肝硬変(黄疸、腹水、肝性脳症、食道静脈瘤)
  • 肝臓がん

 脂肪肝そのものは症状はありませんが、放置しているとさまざまな問題を起こす危険性があります。
 脂肪肝の一部は脂肪肝炎という肝炎を起こし、それが続くと肝臓が硬くなり肝硬変に陥ります。
 肝硬変になると有害物質がたまりやすくなり、黄疸(皮膚が黄色くなる)や肝性脳症(意識がおかしくなる)を引き起こします。また肝臓の血管の圧が高くなり、腹水がたまってきたり食道静脈瘤ができやすくなります。この食道静脈瘤は破裂すると大量出血しやすくとても危険です。
 また炎症が続くと肝臓がんが起こりやすくなります。以前は日本人の肝臓がんのほとんどはC型肝炎やB型肝炎が原因でしたが、最近は脂肪肝による肝臓がんが増加しています。
 さらに脂肪肝の人は高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病をもっている人が多いです。これらは心臓病や脳卒中といった病気のリスクとなるため、注意して管理していく必要があります。

  脂肪肝の治療

 脂肪肝の治療で最も大切なのが減量(ダイエット)です。食事や運動に取り組んで数キログラム体重を減らすだけでも肝臓の数値はかなり改善します。
 体重があまり減らなくても体脂肪率が減れば、脂肪肝の改善が期待できます。筋肉量を保ちながら減量に取り組むようにしましょう。
 飲酒の習慣がある人は、アルコールを減らすことも効果があります。
 脂肪肝には有効性が確立された治療薬はなく、まずは生活習慣を改善して減量することが治療の柱となります。
 コーヒーに効果がある可能性もいわれており、脂肪肝の患者さんには積極的にすすめています(ただし砂糖はあまり入れないようにしましょう)。
 糖尿病の治療薬の一部に脂肪肝の改善効果が確認されており、糖尿病を合併しているケースではそうした薬剤を検討します。

脂肪肝はとても多い病気ですが、自覚症状がなく放置されがちです。しかし長期間続くと、肝硬変や肝臓がんといった怖い病気を引き起こします。健診で肝臓の数値の異常を指摘されたら、放置せずご相談ください。

 

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